「どうしたい?」が言えない3歳児に。自分の気持ちを言葉にする声かけとワークシート活用法
お子さんが「これ、どうしたい?」と聞かれたときに、「わからない」「どっちでもいい」と答えてしまうことはありませんか。3歳頃の幼児期は、感情が豊かになる一方で、まだそれを言葉で表現するのが難しい時期でもあります。親としては、お子さんの気持ちを理解し、その成長をサポートしたいと願うものです。
この記事では、お子さんが自分の気持ちを言葉にするのが苦手な場合に、親ができる具体的な声かけのヒントと、感情を育むワークシートの活用法についてご紹介します。
「どうしたい?」が言えない背景にある子供の気持ち
3歳前後の子供たちが自分の気持ちを言葉にできない背景には、いくつかの理由が考えられます。
- 感情の複雑さと言葉のミスマッチ: 喜びや悲しみといった基本的な感情は認識できても、「もやもやする」「イライラする」といった複雑な感情を細かく区別し、適切な言葉で表現することはまだ難しい段階です。
- 語彙の不足: 感情を表す言葉のレパートリーがまだ少なく、適切な言葉が見つからないために「わからない」と答えてしまうことがあります。
- 表現の経験不足: 自分の気持ちを言葉で伝える経験がまだ少ないため、どう伝えれば良いのか戸惑ってしまうことがあります。
- 選択することへのプレッシャー: 「どちらかを選ばなければならない」という状況が、子供にとってプレッシャーになることもあります。
このような背景を理解することで、お子さんへの接し方が変わるかもしれません。
気持ちを言葉にするための具体的な声かけのコツ
お子さんが自分の気持ちを表現しやすくなるような声かけには、いくつかのポイントがあります。
1. 親が感情を代弁する(感情のラベリング)
子供が感じているであろう感情を、親が言葉にして伝えてあげることで、子供は「この感情は、こういう言葉で表現するんだ」と学びます。
- 具体例:
- 「おもちゃを取られて、悲しかったね」「悔しかったんだね」
- 「公園に行けなくて、残念だったね」
- 「お友達が近くに来て、嬉しかったんだね」
- 「転んでしまって、痛かったね、びっくりしたね」
2. 「はい/いいえ」で答えられる質問から始める
いきなり複雑な感情を問うのではなく、簡単な質問から入ることで、子供は答えやすくなります。
- 具体例:
- 「このおやつ、食べたい?」「うん、食べたい」「ううん、食べたくない」
- 「公園、行きたい?」「うん」「ううん」
3. 選択肢を与える
複数の選択肢を提示することで、子供は自分の好みをより具体的に考えやすくなります。この時、選択肢は多くしすぎず、2〜3個程度に絞ることが大切です。
- 具体例:
- 「絵本を読もうか、ブロックで遊ぼうか、どっちがいいかな?」
- 「この青い服と、赤い服、どっちを着たいかな?」
- 「先に手洗いをしようか、それともおもちゃを片付けようか、どっちから始める?」
4. 状況を具体的に描写して感情を引き出す
子供の行動や状況を具体的に言葉にしてあげることで、子供は自分の感情と行動を結びつけやすくなります。
- 具体例:
- 「お友達と喧嘩して、顔が赤くなっているね。怒っているのかな」
- 「ママがいないから、涙が出たんだね。寂しい気持ちなのかな」
5. 肯定的なフィードバックを欠かさない
子供が自分の気持ちを少しでも表現できた時には、「教えてくれてありがとう」「そうだったんだね」と受け止める言葉をかけ、肯定的なフィードバックを返しましょう。これにより、子供は安心して自分の気持ちを表現できるようになります。
ワークシートや遊びで気持ちを育むアイデア
声かけに加えて、視覚的な情報や遊びを取り入れることで、子供はより楽しく感情を学ぶことができます。
1. 感情カードや表情お絵かき
様々な表情のイラストが描かれたカードや、自分で顔の表情を描くワークシートは、感情を視覚的に理解するのに役立ちます。
- 使い方:
- 感情カード: 「この顔はどんな気持ちかな?」「今、あなたはどんな気持ち?」と問いかけ、カードを選んでもらいます。
- 表情お絵かき: 顔の輪郭だけが描かれたシートに、その時の気持ちに合わせた目や口を描いてもらいます。「嬉しい顔を描いてみよう」「悲しい顔はどんなかな?」と促します。
- アレンジアイデア: 感情カードを使い、今日の気分をカードで示してもらうことで、毎日感情を意識するきっかけになります。
2. 絵本を使った気持ちの読み取り
絵本の中の登場人物の気持ちを考えることで、他者の感情や状況を理解し、自分の感情と結びつける練習になります。
- 使い方:
- 「この子、どんな顔をしている?」「どんな気持ちかな?」
- 「もしあなたがこの子だったら、どうする?」
- 「なぜこの子はこの気持ちになったのかな?」
- 選び方のヒント: 様々な感情が描かれている絵本、登場人物の表情が豊かな絵本を選ぶと良いでしょう。
3. ごっこ遊びでの感情表現練習
ごっこ遊びは、子供が他者になりきり、様々な感情を体験できる絶好の機会です。
- 使い方:
- 「お医者さん、痛いって言ってるよ。どんな気持ちかな?」
- 「お母さんがいなくて寂しい子がいるみたい。どう声をかけてあげようか?」
- 「ロボットが突然動かなくなっちゃった。ロボットはどんな気持ちかな?」
- ポイント: 子供の自由な発想を尊重し、親は一緒に遊びながら、さりげなく感情の言葉を引き出すような声かけをします。
実践のヒントと注意点
お子さんが気持ちを言葉にできるようになるまでには時間がかかります。焦らず、日々の小さな成長を喜びながら、以下の点を意識して取り組んでみてください。
- 完璧を目指さない: 全ての感情を常に言葉にできなくても大丈夫です。少しずつ、できることを増やしていきましょう。
- 子供のペースを尊重する: 無理強いはせず、子供が話したがらない時は、「そうなんだね」と受け止めるだけでも良いでしょう。
- 親自身の感情表現も大切にする: 親が自分の感情を言葉にして伝える姿を見せることで、子供は自然と学びます。例えば、「ママ、今日はちょっと疲れているな」「嬉しいな」などと、日常生活の中で伝えてみましょう。
- 毎日少しずつ継続する: 短い時間でも、毎日意識して声かけや遊びを取り入れることが、子供の感情理解を深めることにつながります。
お子さんが自分の気持ちを言葉にできるようになることは、自己肯定感を育み、他者とのより良いコミュニケーションを築くための大切なステップです。焦らず、お子さんのペースに合わせて、親子で楽しみながら取り組んでみてください。